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セキュリティ

目次

Hermes Agent は、多層防御のセキュリティモデルで作られています。このページでは、コマンドの承認からコンテナによる隔離、メッセージングプラットフォームでの利用者の認可まで、すべてのセキュリティ境界を扱います。

概要

セキュリティモデルは 8 つの層でできています。

  1. 利用者の認可 — 誰がエージェントと話せるか(許可リスト、DM のペアリング)
  2. 危険なコマンドの承認 — 破壊的な操作に人の判断を挟む
  3. ファイル書き込みの安全装置 — write_file/patch に対する拒否リストと、任意で使える書き込みサンドボックス
  4. コンテナによる隔離 — Docker / Singularity / Modal によるサンドボックスと堅牢な設定
  5. MCP の資格情報のふるい分け — MCP のサブプロセスに対する環境変数の隔離
  6. コンテキストファイルの走査 — プロジェクト内のファイルに対するプロンプトインジェクション検出
  7. セッション間の隔離 — セッションどうしは互いのデータや状態にさわれません。cron ジョブの保存先パスは、パストラバーサル攻撃に耐えるよう固めてあります
  8. 入力の無害化 — ターミナルツールのバックエンドで受け取る作業ディレクトリの指定は、シェルインジェクションを防ぐために許可リストと照合されます

危険なコマンドの承認

コマンドを実行する前に、Hermes はそれを危険なパターンの一覧と照らし合わせます。当てはまるものがあれば、利用者がはっきり承認しないかぎり実行されません。

承認のモード

承認のしくみには 3 つのモードがあり、~/.hermes/config.yaml の approvals.mode で設定します。

approvals:
  mode: smart                     # smart | manual | off
  timeout: 300                    # seconds to wait for user response (default: 300)
  cron_mode: deny                 # deny | approve — what cron jobs do when they hit a dangerous command
  single_query_mode: deny         # deny | approve — what single-query (-q) sessions do on a dangerous command
  unattended_mode: deny           # deny | approve — what webhook/API sessions do on a dangerous command
  mcp_reload_confirm: true        # /reload-mcp asks before invalidating the MCP tool cache
  destructive_slash_confirm: true # /clear, /new, /reset, /undo prompt before discarding state

設定できるキーは次のとおりです。

キー 既定値 何を決めるか
mode smart 危険なシェルコマンドに対する承認の方針です。下の表を参照してください。
timeout 300 承認の返事を待つ秒数です。これを過ぎると時間切れになります。
cron_mode deny cron ジョブが危険なコマンドの確認を出したとき、人がいない状態でどう振る舞うかです。deny はそのコマンドを止めます(エージェントは別の道を探すことになります)。approve は cron の文脈ですべて自動承認します。
single_query_mode deny 一回きりの hermes chat -q セッションが危険なコマンドの確認を出したときの振る舞いです。-q のセッションは 1 ターンだけ動いて終了し、確認に答える人はいません。deny はそのコマンドを止め(エージェントは別の道を探すことになります)、approve は単発クエリの文脈ですべて自動承認します。cron_mode と同じ考え方です。
unattended_mode deny 人の付いていないプログラム的なプラットフォーム(webhook、msgraph_webhook、api_server)のセッションが危険なコマンドの確認を出したときの振る舞いです。こうした窓口には /approve に答えられる人がいないので、承認の時間切れまで待たずに、deny はそのコマンドをただちに止め(エージェントは別の道を探すことになります)、approve は無人の文脈ですべて自動承認します。例外として、クライアントが確認カードに答えられる api_server のセッション(/v1/runs とストリーミングの chat completions。POST /v1/runs/{id}/approval で答えます)には、承認の依頼がそのまま届きます。cron_mode と同じ考え方です。
mcp_reload_confirm true true のとき、/reload-mcp は MCP のツール一式を組み直す前に確認します。組み直すとプロバイダー側のプロンプトキャッシュが効かなくなるため(ツールのスキーマはシステムプロンプトに入っています)、次のメッセージで入力トークンを丸ごと送り直すことになります。常に承認 を選ぶと、このキーが false に変わります。
destructive_slash_confirm true true のとき、セッションを壊す種類のスラッシュコマンド(/clear、/new、/reset、/undo)は、会話の状態を捨てる前に確認します。3 択のダイアログ(今回だけ承認 / 常に承認 / 取り消し)で、Telegram、Discord、Slack では各プラットフォームの はい / いいえ ボタンを使い、それ以外ではテキストで代替します。常に承認 を選ぶと、このキーが false に変わります。TUI も /clear、/new、/reset のダイアログでこの設定に従います。HERMES_TUI_NO_CONFIRM=1 を立てると、設定値にかかわらずそのダイアログを飛ばします。
モード 振る舞い
smart(既定) 補助の LLM に危険度を判定させます。危険の少ないコマンド(たとえば python -c "print('hello')")は、そのコマンドにかぎって自動承認されます。本当に危険なコマンドは自動で拒否されます。判断がつかないものは、人への確認に上げます。
manual 危険なコマンドでは必ず利用者に確認します。
off 承認の検査をすべて止めます。--yolo を付けて動かすのと同じです。どのコマンドも確認なしで実行されます。

YOLO モード

YOLO モードは、いまのセッションで危険なコマンドの確認を すべて 飛ばします。有効にする方法は 3 つあります。

  1. CLI のフラグ: hermes --yolo または hermes chat --yolo でセッションを開始する
  2. スラッシュコマンド: セッション中に /yolo と打って切り替える
  3. 環境変数: HERMES_YOLO_MODE=1 を設定する

/yolo コマンドは 切り替え です。使うたびに入 / 切が反転します。

> /yolo
  ⚡ YOLO mode ON — all commands auto-approved. Use with caution.

> /yolo
  ⚠ YOLO mode OFF — dangerous commands will require approval.

YOLO モードは CLI でもゲートウェイのセッションでも使えます。/yolo が効くのは、それを入力したセッションだけです。この設定はセッションと一緒に保存されるので、再起動しても残ります。メッセージングのチャットではゲートウェイを再起動しても続き、TUI とデスクトップアプリではセッションを開き直したり再開したりしても続きます。メッセージングのプラットフォームでは、/new と /resume で始めた次の会話は承認が元に戻った状態になります。

YOLO が有効なあいだ、確認が飛ばされていることを忘れにくいように、Hermes は 2 つの表示を出し続けます。

  • すでに YOLO が有効な状態でセッションを始めたときに出る、赤い帯の行です: ⚠ YOLO mode — all approval prompts bypassed。YOLO が切のときは出ないので、ふだんの表示はすっきりしたままです。
  • ステータスバーに出る ⚠ YOLO の表示です。どの幅でも表示され、YOLO を切り替えるとその場で変わります(リッチテキストの描画でも、プレーンテキストの代替でも同じです)。

セッションを壊す種類のスラッシュコマンド(/clear、/new / /reset、/undo、/quit --delete — /exit --delete は別名)については、CLI も実行前に確認を出します。スラッシュコマンド — 破壊的なコマンドの確認を参照してください。

監視下のゲートウェイに対するライフサイクル制限

ターミナルツールには、監視下にある自分自身のプロセスの中からゲートウェイを 止めたり再起動したりすることを防ぐ、上書きできない別の防護があります。自分で 自分を再起動すると、ツールが終わりきる前に落ちてしまい、監視役による自動再開の ループを招きかねません。利用者の承認も、YOLO モードも、force=True も、この 防護は素通りできません。

この防護は、ゲートウェイが動いているインタープリターのイメージを狙ったプロセス 終了にも働きます。taskkill /F /IM python.exe、taskkill /FI "IMAGENAME eq python.exe"、 Stop-Process -Name python、pkill -9 python3、killall python、pkill -f python、 さらに pgrep python | xargs kill のように名前から導く終了もそうです。監視下の ゲートウェイは文字どおり python のプロセスなので、こうしたコマンドはゲートウェイ (とエージェント自身のターン)まで道連れにします。エージェントが持っている プロセスに絞った終了は通ります。バックグラウンドジョブの proc_* の id (process(action="kill", …))や、明示した PID(taskkill /F /PID <pid>、kill <pid>)が それにあたります。別のイメージ名(taskkill /F /IM notepad.exe)は影響を受けません。 この防護は、生成されるどの起動方式でも働きます。systemd のユニット、launchd の plist、 s6 の run スクリプト、Windows のタスク スケジューラのいずれも、 HERMES_SUPERVISED_CHILD の印を出すためです。

macOS では、実行される launchctl submit と launchctl bootstrap のコマンドが ジョブのラベルに関係なく 制限されます。これは、当たり障りのないラベルを付けた 間接的な再起動の仕掛けを捕まえるための、控えめな登録の制限であって、対象の plist を 調べているわけではありません。RunAtLoad=false で KeepAlive のキーを持たない、 独立したスケジュールジョブも拒否されます。拒否されたことは、そのジョブが KeepAlive を 使っているとか、Hermes を制御しているとかいう 証拠にはなりません。

許可された LaunchAgent の保守作業は、動いているゲートウェイの外にある別のシェルで 行ってください。独立した load/unload のコマンドの中には、いまのところラベルに 基づく検査を通るものもありますが、それは対象を確かめたうえでの例外ではありませんし、 bootstrap の拒否を回避してよいという意味でもありません。読み取りだけの launchctl print は、ライフサイクルの操作にはあたりません。外での保守作業のあとは、 ディスク上の plist と読み込み済みのジョブを区別してください。plist を検証し、 読み込まれているスケジュールを読み返してから、有効になったと報告することです。

ツールが拒否したということは、そのツール呼び出しではコマンドが実行されなかった、 という意味です。アシスタントが呼び出し自体を控えるのは、モデル側の別の判断です。 モデルを変えても、ターミナル側の防護の方針は変わりません。

絶対禁止リスト(つねに効く床)

取り返しのつかないファイルシステムの消去、フォーク爆弾、ブロックデバイスへの直接書き込みなど、あまりに壊滅的なコマンドについては、Hermes は次のいずれであっても実行を 拒否 します。

  • --yolo / /yolo が入っている
  • approvals.mode: off になっている
  • cron ジョブが人のいない approve モードで動いている
  • 利用者がはっきり「常に許可」を押した

この禁止リストは --yolo のさらに下にある床です。承認の層がコマンドを見るよりも 前 に働き、上書きするフラグはありません。いま対象になっているパターンは次のとおりです(すべてではありません。tools/approval.py::UNRECOVERABLE_BLOCKLIST と同期しています)。

パターン 絶対禁止の理由
rm -rf / と、その明らかな変種 ファイルシステムの根元を消し去ります
rm -rf --no-preserve-root / 「本当に根元でいい」と明示した変種です
`:(){ :\ :& };:`(bash のフォーク爆弾) 再起動するまでホストを占拠します
マウント済みのルートデバイスへの mkfs.* 動いているシステムを初期化します
dd if=/dev/zero of=/dev/sd* 物理ディスクをゼロで埋めます
信頼できない URL をルートファイルシステムの最上位で sh に流し込む 遠隔からのコード実行の入口として、承認するには広すぎます

禁止リストに当たると、ツール呼び出しは理由を説明するエラーをエージェントに返し、何も実行されません。まっとうな作業でこうしたコマンドが必要な場合(消去して入れ直す仕組みを運用している、など)は、エージェントの外で実行してください。

この床は、シェルの引用符が解釈できないコマンド(grep 'unterminated)でも閉じる側に倒れます。エラーには malformed executable payload と出ます。引用符の判定は書かれたとおりのコマンドに対して行うので、引用符で囲まれたパターンの中にあるシェルとして正しいエスケープ(grep -o "[^\"]*" file)は壊れているとは見なされませんし、区切りの前にエスケープされた引用符があっても(echo "a\"b"; reboot)、その後ろのコマンドが隠れることはありません。

利用者が定義する拒否ルール(approvals.deny)

絶対禁止リストは固定で、コードとともに出荷されます。approvals.deny は、その利用者が編集できる版です。当てはまるターミナルのコマンドを無条件で止めるグロブパターンの一覧で、--yolo、/yolo、approvals.mode: off より 前 に効きます。「これだけは絶対にさせない」という例外付きの yolo 運用に使えます。

approvals:
  deny:
    - "git push --force*"
    - "*curl*|*sh*"
    - "dd if=* of=/dev/*"

詳しく見ていきます。

  • パターンは fnmatch のグロブ(*、?、[...])で、コマンド全体の文字列と、実行されうるコマンドの候補それぞれに対して 大文字小文字を区別せず 照合されます。git push --force* は git push --force origin main に当たりますが、git push origin main には当たりません。
  • 照合は、危険パターンの検出器が使うのと同じ、正規化して難読化を解いたコマンドの変種に対しても走ります。そのため、引用符を使った単純なごまかし(git pu""sh --force)ではルールをすり抜けられません。
  • 実行されうる候補は、書かれたパスをそのまま保ちつつ、その末尾のファイル名にも当たります。sudo * は /usr/bin/sudo -n id と ./sudo -n id の両方を覆います。/usr/bin/sudo * のようにパスまで指定したルールが、sudo という名前のすべてのバイナリに対するルールに なることはありません。
  • 引用符を踏まえた解析により、変数の代入や先頭のリダイレクトのあと、;、&&、||、パイプ、グループ、コマンド置換、それに if/then/else/do のふつうの切り替わりの先にあるコマンドも見えるようになります。対応している起動役には sudo、env、command、exec、nohup、setsid、time、nice、timeout、stdbuf、ionice、chrt、taskset、chroot が含まれます。既知のオプションの引数は読み飛ばします。command -v/-V による検索は実行ではありません。シェルの -c に渡される中身は再帰的に調べます。env -S / --split-string の中に文字どおり書かれた実行ファイルと引数の文字列は、GNU 式の引用符とエスケープ(\_ による語の区切りや \c による打ち切りを含みます)として読み、残りのコマンド引数を後ろに付けます。その引数の中にあるシェルの記号は、実際にシェルの -c がそれを受け取らないかぎりデータのままです。env -a / --argv0 の値は引数であって、実行ファイル名ではありません。シェルと GNU の split-string のコメントからは、実行の候補は生まれません。
  • 追加で拾う実行候補では、語と語の あいだ の空白はまとめられますが、引用符の中身と引数のパスはそのまま残ります。そのため git status という厳密なルールは、env git\tstatus; echo done にも当たります(\t はタブを表します)。echo 'sudo -n id' のように引用符の中で言及しただけのものは、コマンドには格上げされません。*sudo* のような入力全体に対する従来のグロブは、これまでどおりどこに出てきても当たります。
  • YAML の引用符について: パターンは必ず引用符で囲んでください。先頭が裸の * だと YAML のエイリアスと解釈されて読み込みに失敗します。{、!、: にも YAML 上の意味があります。シェル寄りの中身には、シングルクォートがいちばん安全です。
  • 利用者が定義した拒否ルールは、隔離されたコンテナも含めてすべてのターミナルのバックエンドに、バックエンド固有の承認の近道より前に適用されます。
  • 拒否されたコマンドは、やり直したり言い換えたりしないようにという BLOCKED エラーをエージェントに返します。何も実行されません。

承認まわりの他の設定と同じく、変更はすぐ効きます(設定のキャッシュは更新時刻で管理されています)。セッションを開き直す必要はありません。

承認の時間切れ

危険なコマンドの確認が出ると、利用者には設定した長さの時間が与えられます。その時間内に返事がないと、そのコマンドは既定で 拒否 されます(閉じる側に倒れます)。

時間切れになった確認は開き直せません。保留中の項目は捨てられ、エージェントにはそのターンの中で勝手にやり直さないよう伝えられます。やはり実行したい場合は、あらためて頼むメッセージを送ってください(たとえば「さっきのをいま実行して」)。エージェントは新しくツールを呼び、新しい承認のカードが出ます。「今回だけ」の承認はその呼び出しにだけ効きます。時間切れは拒否として数えられないので、もう一度頼んでも不利にはなりません。

時間は ~/.hermes/config.yaml で設定します。

approvals:
  timeout: 300  # seconds (default: 300)

何が承認の対象になるか

次のパターンが承認の確認を出します(tools/approval.py で定義されています)。

パターン 説明
rm -r / rm --recursive 再帰的な削除
rm ... / ルートパスでの削除
chmod 777/666 / o+w / a+w 誰でも書き込める権限
危険な権限を伴う chmod --recursive 誰でも書き込める権限を再帰的に付与(長い形式のフラグ)
chown -R root / chown --recursive root root への再帰的な所有者変更
mkfs ファイルシステムの初期化
dd if= ディスクの複製
> /dev/sd ブロックデバイスへの書き込み
DROP TABLE/DATABASE SQL の DROP
DELETE FROM(WHERE なし) WHERE を付けない SQL の DELETE
TRUNCATE TABLE SQL の TRUNCATE
> /etc/ システム設定の上書き
systemctl stop/restart/disable/mask システムのサービスの停止・再起動・無効化
kill -9 -1 すべてのプロセスの終了
pkill -9 プロセスの強制終了
フォーク爆弾のパターン フォーク爆弾
bash -c / sh -c / zsh -c / ksh -c -c フラグによるシェルコマンドの実行(-lc のような組み合わせも含みます)
python -e / perl -e / ruby -e / node -c -e/-c フラグによるスクリプトの実行
`curl ... \ sh / wget ... \ sh` 遠隔から取得した内容をシェルに流し込む
bash <(curl ...) / sh <(wget ...) プロセス置換による遠隔スクリプトの実行
/etc/、~/.ssh/、~/.hermes/.env への tee tee による重要なファイルの上書き
/etc/、~/.ssh/、~/.hermes/.env への > / >> リダイレクトによる重要なファイルの上書き
xargs rm xargs と rm の組み合わせ
find -exec rm / find -delete find に破壊的な動作を組み合わせたもの
/etc/ への cp/mv/install システム設定へのファイルの複製・移動
/etc/ に対する sed -i / sed --in-place システム設定のその場での書き換え
hermes / gateway に対する pkill/killall 自分自身を終了させないための防止
&/disown/nohup/setsid を伴う gateway run サービス管理の外でゲートウェイを起動させないための防止
docker stop/kill/restart、docker compose down/stop/kill/restart コンテナのライフサイクル(全体オプションや docker-compose も拾います)
docker -H/--host/--context、DOCKER_HOST=/DOCKER_CONTEXT= Docker のデーモンの向き先変更 — 別の(多くは遠隔の)デーモンを相手にするコマンドです
docker context use 以降のすべての docker コマンドの既定のデーモンを切り替えます
podman --remote/-r/--url/--connection/--identity、CONTAINER_HOST= Podman の遠隔デーモンへの向き先変更

execute_code の台本

execute_code で動かす台本は subprocess、os、shutil を直接呼べるので、その呼び出しは上のパターンをまったく通りません。そのため、メッセージングや API などのゲートウェイのセッションでは、台本が動き始める前に台本全体について一度だけたずねます。拒否された台本や、答えのなかった台本は動きません。cron_mode、single_query_mode、unattended_mode は、コマンドと同じように台本についてもすぐに可否を決めます。YOLO と mode: off では確認を省きます。

ローカルのセッション(従来の CLI、TUI、Desktop、ACP のエディター)は、代わりに対話型 CLI の規則に従います。manual(と smart)では、セッションを見ている利用者が打ち込んだターンには台本全体の承認がありません。台本の中の Python レベルのファイル操作やプロセス操作は確認なしで動き、確認が出るのは台本の terminal() の呼び出しだけです。それぞれがセッション自身のプロンプトでたずねます。ゲートウェイ1つで動く仕組みになる前の CLI と同じです。この免除には、見ている利用者が送ったターンであることと、台本が動き始めるときに承認に答えられる利用者がつながっていることの両方が必要です。次のものは、ローカルのセッションでも台本全体の承認が残ります。

  • そのセッションで誰も打ち込んでいないターン: プラグインの inject_message のターン、委任の完了、バックグラウンドのプロセスや監視パターンのお知らせ、/loop の刻み、ハートビート、ホストされたルームのタスク
  • delegate_task の子と、/bg / /btw の脇のタスク
  • 承認できる利用者が誰もつながっていない間に動く、利用者のターン

承認の流れ(CLI)

対話型の CLI では、危険なコマンドはその場で承認の確認を出します。

  ⚠️  DANGEROUS COMMAND: recursive delete
      rm -rf ~/old-project

      [o]nce  |  [s]ession  |  [a]lways  |  [d]eny

      Choice [o/s/a/D]:

4 つの選択肢があります。

  • once — この 1 回だけ実行を許します
  • session — このセッションのあいだ、このパターンを許します
  • always — 恒久的な許可リストに加えます(config.yaml に保存されます)
  • deny(既定) — コマンドを止めます

承認の流れ(ゲートウェイ / メッセージング)

メッセージングのプラットフォームでは、エージェントが危険なコマンドの詳細をチャットに送り、利用者の返事を待ちます。

  • 承認するときは yes、y、approve、ok、go のいずれかを返します
  • 拒否するときは no、n、deny、cancel のいずれかを返します

ゲートウェイを動かすと、HERMES_EXEC_ASK=1 環境変数が自動で設定されます。

恒久的な許可リスト

「always」で承認したコマンドは ~/.hermes/config.yaml に保存されます。

# Permanently allowed dangerous command patterns
command_allowlist:
  - rm
  - systemctl

これらのパターンは起動時に読み込まれ、以降のセッションでは黙って承認されます。

書けるのは、コマンドそのものの文字列、シェル式のグロブ(podman *)、あるいは script execution via heredoc のような危険パターンのルールキー(承認の確認に表示される見出し)です。ルールキーはどの窓口でも尊重されます。人のいない窓口でも同じで、cron_mode/single_query_mode/unattended_mode: deny のもとで動く cron ジョブ、hermes chat -q の実行、webhook のセッションであっても、検出されたルールキーが command_allowlist にあるコマンドは実行されます。

この設定は文字列の一覧でなければなりません。一覧を引用符付きの YAML/JSON 文字列として保存していた古い環境では、読み込み時にその一覧を復元し、hermes config edit で保存し直すよう警告を出します。それ以外の壊れた値は警告を出して無視されます。1 文字ずつの承認に化けることは決してありません。読み込みによって設定ファイルが書き換わることもありません。

承認の履歴から掘り起こす(hermes approvals suggest)

毎回同じ確認に答える代わりに、これまでの承認の判断から許可リストの案を掘り起こせます。

hermes approvals suggest            # dry run — prints a numbered proposal
hermes approvals suggest --apply 1,3  # merge picks into command_allowlist
hermes approvals suggest --json     # machine-readable output

このコマンドはセッションのデータベース(~/.hermes/state.db)を調べ、危険と判定されたうえで実際に実行されたコマンド、つまり承認したコマンドを集めてパターンにまとめ(git push * や、複合コマンドなら危険分類のキー)、承認された回数の多い順に並べます。

Proposed command_allowlist additions (from approval history, last 90 days):

  1. git push *    — approved 14x
  2. docker restart/stop/kill (container lifecycle)    — approved 9x (class key)

安全のための決まりごとです。

  • 自動で適用されることは決してありません。 既定の実行は読み取りだけで、

--apply N[,M...] をはっきり指定したときだけ config.yaml に書き込みます。

  • 破壊的な分類は、どれだけ承認されていても提案されません。 再帰的な削除、

sudo、ディスクやデバイスへの書き込み、資格情報やシステム設定の書き換え、 シェルへの流し込み、SQL の DROP/TRUNCATE、プロセスの終了、そして絶対禁止の 分類はすべて最初から外されます。rm -rf build/ を 100 回承認していても、 rm の項目が出てくることはありません。

  • すでに command_allowlist で覆われている提案は飛ばされます。
  • 掘り起こしたコマンドの中の資格情報は伏せられます(ghp_…、

bot<id>:<token> の URL、KEY=value の代入、bearer トークン)。表示される e.g. の例でも --json の出力でも、ターミナル出力と同じ伏せ字処理を使います。 伏せた文字列が許可リストのパターンとして使われることはありません。グロブに 資格情報が入り込んでしまうコマンド(TOKEN=… git …)は、代わりに危険分類の キーで提案されます。セッションのデータベース自体には、実行されたときのままの コマンドが残ります。

便利なフラグとして --days N(履歴の範囲、既定 90)、--min-count N(対象にする最低の承認回数、既定 2)、--limit N、--db PATH があります。

ファイル書き込みの安全装置

write_file や patch がディスクにさわる前に、Hermes は書き込み先のパスを拒否リストと、任意で設定するサンドボックスに照らします。止められた書き込みは、すぐにエラーとしてエージェントに返ります。承認の確認は出ませんし、チャットの画面から上書きする手段もありません。それでもモデルは編集に成功したと言うことがあります。display.file_mutation_verifier が入っているとき(既定)は、アシスタントの締めくくりの要約よりファイル変更の検証フッターを信じてください。

保護されたパス(つねに拒否)

次の種類は、HERMES_WRITE_SAFE_ROOT を設定していなくてもつねに拒否されます。

種類 例
OS の資格情報の保管場所 ~/.ssh/(鍵、authorized_keys)、~/.aws/、~/.kube/、/etc/sudoers、~/.netrc
Hermes の秘密情報の保管場所 HERMES_HOME 配下(有効なプロファイルと全体の root の両方)の .env、.anthropic_oauth.json、auth/google_oauth.json、Bitwarden のキャッシュ(cache/bws_cache.json、cache/bws_cache.enc.json)、vault/、browser-profile/、mcp-tokens/、pairing/。制御用のファイル(auth.json、config.yaml、webhook_subscriptions.json)は読み取りが拒否されますが、書き込みはできます。
Windows の NT / デバイス名前空間のパス \??\...、\\.\...、\\?\UNC\...、\\?\GLOBALROOT... — どのプラットフォームでも、読み取りも書き込みも拒否されます。Windows では、こうしたパスを *解決するだけ* で(たとえば \??\UNC\host\share)外向きの SMB 認証が走り、利用者の NTLM ハッシュが漏れることがあります。これらの接頭辞は、ふつうのパス正規化も回避します。ふつうの長いローカルパス(\\?\C:\...)や素の UNC 共有(\\server\share)は影響を受けません。

プロジェクトの中にある .env、.env.local、.env.production、.envrc は、ディスク上のどこにあっても 読み取りが拒否 されますが(ファイル系のツールは読み取りを断ります)、書き込みはできます。エージェントは代わりに作ったり編集したりできて、ただ中身を読み返せない、ということです。

安全なルートの内側にあっても、重要なパスは止められたままです。HERMES_WRITE_SAFE_ROOT を $HOME に向けても、~/.ssh/id_rsa に書けるようにはなりません。

OS の資格情報の行にある ~ は、プロセスの HOME だけでなく、書き込みが着地しうる *すべての* ホームを指します。OS 利用者の本当のホーム、プロファイルのホーム(TERMINAL_HOME_MODE=profile のときの {HERMES_HOME}/home、およびコンテナや生成されたワーカーで、プロセスの HOME が固定されている場合)、そして名前付きのアカウント(~root/.ssh/authorized_keys)です。本当のホームの ~/.aws/credentials を絶対パスで指した場合、エージェントのプロセスが HOME を別の場所に向けて動いていても拒否されます。

安全なルートの違反は Write denied: '…' is outside HERMES_WRITE_SAFE_ROOT (…) を返します。資格情報のパスを止めた場合は Write denied: '…' is a protected system/credential file. です。

例外 — ~/.ssh/config は完全な拒否ではなく、承認をはさみます。 SSH の *クライアント設定* には秘密鍵そのものは入っておらず、これを編集する作業 (ホストの別名、ProxyJump、VS Code Remote-SSH の接続先)はよくあることです。 そこで write_file / patch は、以前のような一律の拒否ではなく、ターミナル ツールが ~/.ssh への書き込みで使っているのと同じ「今回だけ / セッション中 / 常に」の確認を通します。それでも ProxyCommand や Match exec のような、 コマンドを実行する指定を書き込めるので、この書き込みが黙って通ることはありません。 対話できない呼び出し元(ACP のファイル橋渡し、人のいないバックグラウンドの ジョブ)は閉じる側に倒れます。秘密鍵、authorized_keys、そのほか ~/.ssh/ 配下のものは、これまでどおり完全に拒否されます。

HERMES_WRITE_SAFE_ROOT(任意のサンドボックス)

設定すると、write_file と patch は挙げたディレクトリの下だけを対象にできます。その外は 完全に拒否 され、危険なコマンドの承認には回りません。

  • 公式の Docker イメージでは自動で設定されます(HERMES_WRITE_SAFE_ROOT=/opt/data)
  • Unix では :、Windows では ; で区切って複数のルートを指定できます
  • 軽い気持ちで ~/.hermes/.env に足さないでください。 プロジェクトのディレクトリに設定すると、エージェントは ~/.hermes/cron/jobs.json やプロファイルのスキル、その接頭辞の外にある他の Hermes の状態に書けなくなります

作業場所と Hermes のホームの両方を許すには、次のようにします。

export HERMES_WRITE_SAFE_ROOT=/path/to/project:/home/you/.hermes

この変数を外すと、書き込みの制限は元に戻ります(保護されたパスの拒否リストは引き続き効きます)。詳しくは HERMES_WRITE_SAFE_ROOT を参照してください。

cron などの Hermes の状態

~/.hermes/cron/jobs.json を直接 patch するようエージェントに頼まないでください。cronjob_manage ツール、hermes cron、/cron を使ってください。これらは正式な API を通してジョブの保存先を更新します。書き込みの安全装置が直接の編集を止めるとき、他の Hermes の制御用ファイルについても同じことが言えます。

利用者の認可(ゲートウェイ)

メッセージングのゲートウェイを動かすとき、Hermes は段階的な認可のしくみで、誰がボットとやりとりできるかを決めます。

認可を確かめる順番

_is_user_authorized() メソッドは次の順に確かめます。

  1. プラットフォームごとの全員許可フラグ(たとえば DISCORD_ALLOW_ALL_USERS=true)
  2. DM ペアリングで承認した一覧(ペアリングコードで承認した利用者)
  3. プラットフォームごとの許可リスト(たとえば TELEGRAM_ALLOWED_USERS=12345,67890)
  4. 全体の許可リスト(GATEWAY_ALLOWED_USERS=12345,67890)
  5. 全体の全員許可(GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS=true)
  6. 既定: 拒否

プラットフォームごとの許可リスト

許可する利用者 ID を、~/.hermes/.env にコンマ区切りで書きます。

# Platform-specific allowlists
TELEGRAM_ALLOWED_USERS=123456789,987654321
DISCORD_ALLOWED_USERS=111222333444555666
WHATSAPP_ALLOWED_USERS=15551234567
SLACK_ALLOWED_USERS=U01ABC123

# Cross-platform allowlist (checked for all platforms)
GATEWAY_ALLOWED_USERS=123456789

# Per-platform allow-all (use with caution)
DISCORD_ALLOW_ALL_USERS=true

# Global allow-all (use with extreme caution)
GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS=true

全体の全員許可は config.yaml に gateway.allow_all_users: true(またはいちばん上の階層に allow_all_users: true)として書くこともできます。true のときはゲートウェイの起動時に GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS へ橋渡しされ(設定の読み込みと再起動のたびに導出し直すので、false に戻せば入口は閉じます)、環境変数を明示していればそちらが優先され、ゲートウェイは許可の出どころが config.yaml であることを名指しした警告を記録します。複数プロファイルのゲートウェイでは、二次のプロファイルは自分の .env に GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS を書きます(そちらの config.yaml がプロセスの環境変数に橋渡しされることはありません)。

DM のペアリング

もっと柔軟に認可したい場合のために、Hermes にはコードを使ったペアリングのしくみがあります。あらかじめ利用者 ID を集めておく代わりに、知らない利用者に 1 回かぎりのペアリングコードを渡し、ボットの持ち主が CLI で承認します。

流れはこうです。

  1. 知らない利用者がボットに DM を送る
  2. ボットが 8 文字のペアリングコードを返す
  3. ボットの持ち主が CLI で hermes pairing approve <platform> <code> を実行する
  4. その利用者が、そのプラットフォームで恒久的に承認される

認可していない相手からの DM をどう扱うかは、~/.hermes/config.yaml で決めます。

unauthorized_dm_behavior: pair

whatsapp:
  unauthorized_dm_behavior: ignore
  • チャット型の DM プラットフォームでは pair が既定です。認可していない DM にはペアリングコードを返します。
  • ignore は、認可していない DM を黙って捨てます。
  • decline は、ペアリングコードの代わりに短く丁寧な断り(「持ち主としか話せません」)を 1 回だけ送り、その後 24 時間はその送り主からのメッセージを無視します。文面は unauthorized_dm_decline_message で変えられます。
  • メールは既定が ignore です(platforms.email.unauthorized_dm_behavior: pair を書いた場合を除きます)。受信箱には関係のない未読が入っていることがあるためです。
  • プラットフォームごとの設定が全体の既定を上書きするので、Telegram ではペアリングを使いつつ、WhatsApp は黙らせておく、といったこともできます。

安全のためのしくみ(OWASP と NIST SP 800-63-4 の指針に基づきます)

項目 内容
コードの形式 紛らわしい文字を除いた 32 文字(0/O/1/I なし)から 8 文字
乱数 暗号論的に安全なもの(secrets.choice())
コードの有効期間 1 時間で失効
回数の制限 利用者ごとに 10 分あたり 1 回
保留の上限 プラットフォームごとに保留中のコードは最大 3 件
締め出し 承認の失敗が 5 回で 1 時間の締め出し
ファイルの保護 ペアリングのデータファイルはすべて chmod 0600
ログ コードが標準出力に記録されることはありません

ペアリングの CLI コマンド

# List pending and approved users
hermes pairing list

# Approve a pairing code
hermes pairing approve telegram ABC12DEF

# Revoke a user's access
hermes pairing revoke telegram 123456789

# Clear all pending codes
hermes pairing clear-pending

保存場所: ペアリングのデータは ~/.hermes/pairing/ に、プラットフォームごとの JSON ファイルとして保存されます。

  • {platform}-pending.json — 保留中のペアリング要求
  • {platform}-approved.json — 承認済みの利用者
  • _rate_limits.json — 回数の制限と締め出しの記録

コンテナによる隔離

docker のターミナルバックエンドを使うとき、Hermes はすべてのコンテナに厳しい防護を施します。

Docker のセキュリティフラグ

どのコンテナも次のフラグ付きで動きます(tools/environments/docker.py で定義されています)。

_BASE_SECURITY_ARGS = [
    "--cap-drop", "ALL",                          # Drop ALL Linux capabilities
    "--cap-add", "DAC_OVERRIDE",                  # Root can write to bind-mounted dirs
    "--cap-add", "CHOWN",                         # Package managers need file ownership
    "--cap-add", "FOWNER",                        # Package managers need file ownership
    "--security-opt", "no-new-privileges",         # Block privilege escalation
    "--pids-limit", "256",                         # Limit process count
    # no-tmp: ok — configures the sandbox's own tmpfs
    "--tmpfs", "/tmp:rw,nosuid,size=512m",         # Size-limited /tmp
    "--tmpfs", "/var/tmp:rw,noexec,nosuid,size=256m",  # No-exec /var/tmp
]

SETUID/SETGID は基本の一覧に 入っていません。コンテナが root で始まり、init や入口のスクリプトが権限を落とす必要があるとき(s6 の権限降格の経路)にだけ、条件付きで足されます。コンテナがすでに root 以外の --user で動いている場合は付きません。/run の tmpfs も基本の一覧から切り出され、イメージごとにマウントされます(既定では noexec で固め、/run から実行する s6-overlay のイメージのときだけ exec にします)。

資源の上限

コンテナの資源は ~/.hermes/config.yaml で設定できます。

terminal:
  backend: docker
  docker_image: "nousresearch/hermes-sandbox:desktop"
  docker_forward_env: []  # Explicit allowlist only; empty keeps secrets out of the container
  container_cpu: 1        # CPU cores
  container_memory: 5120  # MB (default 5GB)
  container_disk: 51200   # MB (default 50GB, requires overlay2 on XFS)
  container_persistent: true  # Persist filesystem across sessions

ファイルシステムの持続

  • 持続モード(container_persistent: true): ~/.hermes/sandboxes/docker/<task_id>/ から /workspace と /root をバインドマウントします
  • 使い捨てモード(container_persistent: false): 作業場所に tmpfs を使うので、後片付けですべて消えます

ターミナルバックエンドのセキュリティ比較

バックエンド 隔離 危険コマンドの検査 向いている用途
local なし — ホスト上で動きます ✅ あり 開発、信頼できる利用者
ssh 別のマシン ✅ あり 別のサーバーで動かす場合
docker コンテナ ❌ 飛ばします(コンテナが境界) 本番のゲートウェイ
singularity コンテナ ❌ 飛ばします HPC の環境
modal クラウドのサンドボックス ❌ 飛ばします 伸縮するクラウドでの隔離
daytona クラウドのサンドボックス ❌ 飛ばします 残しておけるクラウドの作業場所
vercel_sandbox クラウドのマイクロ VM ❌ 飛ばします スナップショットを残せるクラウド実行

環境変数の受け渡し

execute_code と terminal はどちらも、LLM が書いたコードによる資格情報の持ち出しを防ぐため、子プロセスから重要な環境変数を取り除きます。とはいえ、required_environment_variables を宣言しているスキルは、正当な理由でそれらを必要とします。

自社プラットフォームの資格情報 — Buzz メッセージングプラットフォームが使う BUZZ_* の変数 — は、そのセッションが実際に Buzz のエージェントとして動いているときにかぎり、terminal の子プロセス(前面のものと、背後 / PTY で起こしたものの両方)へ渡されます。判定の条件は、そのプロセスが Buzz-ACP の管理下のエージェントであること(Buzz Desktop の仕組みが BUZZ_MANAGED_AGENT を立てます)、あるいは動いているゲートウェイのセッションのプラットフォームが buzz であることです。これにより、Buzz プラットフォームのエージェントは、プラットフォームが定めた CLI(たとえば buzz)をターミナルツールから呼べる一方、同じホスト上の Telegram / CLI / cron のセッションでは変数が取り除かれたままになります。_sanitize_subprocess_env は検索のワーカー(たとえば ddgs のウェブ検索のサブプロセス)、computer-use のドライバーのバイナリ、利用者のスクリプトを動かすもの(! で始まるコマンド、クイックコマンド、cron のスクリプト、webhook のフィルタースクリプト)にも使われるので、Buzz のセッションから起こされた場合はそれらの子プロセスにも変数が渡ります。この例外は ターミナルにかぎった もので、execute_code、ブラウザや TUI ホストの起動(hermes_subprocess_env)、Docker / Modal の子プロセス、env_passthrough の登録には及びません。そちらは閉じたままです。

しくみ

特定の変数をサンドボックスのふるいの外へ通す方法は 2 つあります。

1. スキルに紐づく受け渡し(自動)

スキルが読み込まれ(skill_view や /skill コマンド経由)、そこに required_environment_variables が宣言されていると、実際に環境に設定されている変数だけが自動で受け渡しの対象として登録されます。設定されていない変数(まだ準備が要る状態のもの)は登録され ません。

# In a skill's SKILL.md frontmatter
required_environment_variables:
  - name: TENOR_API_KEY
    prompt: Tenor API key
    help: Get a key from https://developers.google.com/tenor

このスキルを読み込むと、TENOR_API_KEY は execute_code、terminal(ローカル)、さらに遠隔のバックエンド(Docker、Modal) にも渡ります。手作業の設定は要りません。

2. 設定による受け渡し(手動)

どのスキルも宣言していない環境変数は、config.yaml の terminal.env_passthrough に足します。

terminal:
  env_passthrough:
    - MY_CUSTOM_KEY
    - ANOTHER_TOKEN

どちらの一覧も、terminal、execute_code、no_agent の cron スクリプトに等しく効きます。宣言された変数は、その子プロセスが属するプロファイルの値で渡されます。1 つのプロセスが複数のプロファイルを受け持つ場合(複数プロファイルのゲートウェイ、デスクトップやダッシュボードのバックエンド)、各プロファイルの値はそれぞれの .env や秘密情報の取得元から来るのであって、起動したプロファイルが用意したプロセスの環境から来ることはありません。起動したプロファイルの .env の資格情報は、受け持たれた側のプロファイルの子プロセスからは落とされます。

資格情報ファイルの受け渡し(OAuth トークンなど)

スキルによっては、環境変数だけでなく ファイル をサンドボックスの中で必要とします。たとえば Google Workspace は、OAuth のトークンを有効なプロファイルの HERMES_HOME の下に google_token.json として置きます。スキルはこれをフロントマターで宣言します。

required_credential_files:
  - path: google_token.json
    description: Google OAuth2 token (created by setup script)
  - path: google_client_secret.json
    description: Google OAuth2 client credentials

読み込まれると、Hermes は有効なプロファイルの HERMES_HOME にこれらのファイルがあるかを確かめ、マウントの対象として登録します。

  • Docker: 読み取り専用のバインドマウント(-v host:container:ro)
  • Modal: サンドボックスの作成時にマウントし、コマンドのたびに同期します(セッションの途中で OAuth の設定をした場合にも対応します)
  • ローカル: 何もしません(ファイルにはすでにさわれます)

資格情報のファイルは config.yaml に自分で並べることもできます。

terminal:
  credential_files:
    - google_token.json
    - my_custom_oauth_token.json

パスは ~/.hermes/ からの相対です。ファイルはコンテナの中の /root/.hermes/ にマウントされます。この一覧を読むのは tools/credential_files.py です(terminal.credential_files)。terminal: のブロックの下にありますが、読み込むのは中核のターミナルバックエンドではなく資格情報ファイルのモジュールなので、同梱の DEFAULT_CONFIG のひな型には含まれていません。

他の CLI のログインを借りる(Codex CLI、Claude Code)

openai-codex や anthropic について Hermes 自身の使えるログインが無いとき、Hermes は Codex CLI の ~/.codex/auth.json と Claude Code の ~/.claude/.credentials.json(またはキーチェーンの項目)を借り、代わりに更新できます。どちらも 1 回かぎりで入れ替わる更新用トークンを使うので、2 つのプログラムが同じトークンの系統を持つと、先に更新したほうが相手の分を無効にします。これは「ターミナルで 1 回ログインしたのに Hermes が失敗し続ける」(あるいはその逆)という形で現れます。これらの CLI を Hermes と並べて使うなら、Hermes には自分のログインを与えて、借用を切ってください。

auth:
  adopt_external_logins: false   # default: true

この切り替えを切ると、Hermes はそれらのファイルを読むことも更新することもしません。資格情報プールの claude_code の行は消え、hermes auth list がその旨を 1 行表示し、ログにはプロセスごとに INFO が 1 行残ります。影響を受けるのは自動の借用だけです。hermes auth add openai-codex は、既存の Codex CLI のログインを取り込む前に、これまでどおり確認します。自動の復旧も、Hermes がすでに持っている資格情報を直すだけです。Codex CLI やデスクトップから別の ChatGPT のワークスペースにログインした場合は警告とともに断られますし(hermes auth add openai-codex で認証し直してください)、復旧が動いているあいだに済ませたログインが上書きされることもありません。自分のログインは hermes auth add anthropic / hermes auth add openai-codex で足してください。

サンドボックスごとのふるい分け

サンドボックス 既定のふるい 受け渡しによる例外
execute_code 名前に KEY、TOKEN、SECRET、PASSWORD、CREDENTIAL、PASSWD、AUTH を含む変数を止め、安全な接頭辞の変数だけを通します ✅ 受け渡しの変数は両方の検査を素通りします
terminal(ローカル) Hermes の基盤にあたる変数(プロバイダーの鍵、ゲートウェイのトークン、ツールの API キー)を名指しで止めます ✅ 受け渡しの変数は拒否リストを素通りします
terminal(Docker) 既定ではホストの環境変数を渡しません ✅ 受け渡しの変数と docker_forward_env を -e で転送します
terminal(SSH) 既定ではホストの環境変数を渡しません ✅ 受け渡しの変数を SendEnv で転送します。相手側の sshd_config に対応する AcceptEnv が必要です(SSH バックエンドを参照)
terminal(Modal) 既定ではホストの環境変数もファイルも渡しません ✅ 資格情報のファイルをマウントし、環境変数は同期で渡します
MCP 安全なシステムの変数と、設定に書いた env 以外はすべて止めます ❌ 受け渡しの影響を受けません(代わりに MCP の env 設定を使ってください)

気をつけること

  • 受け渡しが効くのは、自分かスキルがはっきり宣言した変数だけです。LLM が書いた任意のコードに対する既定の守りは変わりません
  • 資格情報のファイルは、Docker のコンテナへ 読み取り専用 でマウントされます
  • Skills Guard が、導入の前にスキルの中身をあやしい環境変数のさわり方がないか走査します
  • 設定されていない変数は登録されません(存在しないものは漏れようがありません)
  • Hermes の基盤にあたる秘密情報(プロバイダーの API キー、ゲートウェイのトークン)は、env_passthrough に足すべきではありません。専用のしくみがあります。そうした名前は宣言した時点で拒まれます。また、宣言済みの名前をあとからプラットフォームのアダプターが自分のものとした場合(スキルが読み込まれたあとにプラグインのアダプターが登録された場合)、その時点から渡されなくなります

MCP の資格情報の扱い

MCP(Model Context Protocol)サーバーのサブプロセスは、うっかりの資格情報漏れを防ぐため、ふるいにかけた環境 を受け取ります。

安全な環境変数

ホストから MCP の stdio サブプロセスへ渡されるのは、次の変数だけです。

PATH, HOME, USER, LANG, LC_ALL, TERM, SHELL, TMPDIR

これに加えて XDG_* の変数が渡ります。ほかの環境変数(API キー、トークン、秘密情報)はすべて 取り除かれます。

MCP サーバーの env 設定にはっきり書いた変数は渡されます。

mcp_servers:
  github:
    command: "npx"
    args: ["-y", "@modelcontextprotocol/server-github"]
    env:
      GITHUB_PERSONAL_ACCESS_TOKEN: "ghp_..."  # Only this is passed

資格情報の伏せ字

MCP のツールから返るエラーメッセージは、LLM に渡る前に無害化されます。次のパターンが [REDACTED] に置き換わります。

  • GitHub の PAT(ghp_...)
  • OpenAI 形式の鍵(sk-...)
  • bearer トークン
  • token=、key=、API_KEY=、password=、secret= のパラメーター

ウェブサイトへのアクセス方針

エージェントがウェブやブラウザのツールでどのサイトにアクセスできるかを絞れます。内部のサービスや管理画面、その他の重要な URL にさわらせたくないときに役立ちます。

# In ~/.hermes/config.yaml
security:
  website_blocklist:
    enabled: true
    domains:
      - "*.internal.company.com"
      - "admin.example.com"
    shared_files:
      - "/etc/hermes/blocked-sites.txt"

止めた URL が要求されると、ツールはそのドメインが方針で止められている旨のエラーを返します。この拒否リストは web_search、web_extract、browser_navigate、そして URL を扱えるすべてのツールに効きます。

詳しくは設定ガイドの ウェブサイトの拒否リストを参照してください。

SSRF への防御

URL を扱えるツール(ウェブ検索、ウェブ抽出、画像認識、ブラウザ)はすべて、サーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF)を防ぐため、取得の前に URL を検証します。止められるアドレスには次のものがあります。

  • プライベートネットワーク(RFC 1918): 10.0.0.0/8、172.16.0.0/12、192.168.0.0/16
  • ループバック: 127.0.0.0/8、::1
  • リンクローカル: 169.254.0.0/16(169.254.169.254 のクラウドのメタデータを含みます)
  • CGNAT / 共有アドレス空間(RFC 6598): 100.64.0.0/10(Tailscale、WireGuard の VPN)
  • クラウドのメタデータのホスト名: metadata.google.internal、metadata.goog
  • 予約済み、マルチキャスト、未指定のアドレス

インターネットに面した利用では SSRF への防御はつねに働き、DNS の失敗は止められたものとして扱われます(閉じる側に倒れます)。リダイレクトの連鎖は、経由するたびに検証し直すので、リダイレクトを使った回避もできません。

同じ防護は、URL が自分ではなく相手方から来る取得にも効きます。生成のプロバイダーが返した画像や動画の URL、編集のためにモデルが差し出す参照画像の URL、ペットのスプライトシートと petdex の目録、skills.sh のサイトマップの項目などです。プロバイダーや索引がそれらをプライベートなアドレスやメタデータのアドレスに向けていれば、接続を開く前に断られます。運用者自身が設定したプロバイダーの base_url は影響を受けません。設定した base_url から直接取ってくるダウンロード(OpenRouter の動画コンテンツの窓口)は、最初の 1 回にかぎってプライベートアドレスの分類の検査だけを飛ばしますが、クラウドのメタデータの床は効いたままで、そこから出るリダイレクトはすべて検証し直されます。また、LAN 上に置いた画像生成のプロバイダーが返す *結果* の URL をローカルにキャッシュするには、後述の security.allow_private_urls: true が必要です。

あえてプライベートな URL を許す

環境によっては、内部やプライベートの URL へのアクセスがどうしても要ります。home.arpa を RFC 1918 の空間に解決する家庭のネットワーク、LAN からしか見えない Ollama / llama.cpp の窓口、社内の情報共有サイト、クラウドのメタデータの調査などです。そうした場合のために、全体で外す設定があります。

security:
  allow_private_urls: true   # default: false

有効にすると、ウェブのツール、ブラウザ、画像認識の URL 取得、ゲートウェイのメディアのダウンロードは、RFC 1918 / ループバック / リンクローカル / CGNAT / クラウドのメタデータ宛てを断らなくなります。これは意図して信頼の線を引き直す設定です。 プロンプトインジェクションで与えられた URL をエージェントがローカルのネットワークに対して叩いても許容できるマシンでだけ有効にしてください。外部に面したゲートウェイでは切ったままにすべきです。

ホスト名の部分一致による防護(元の IP が公開のものでも、そっくりに見せる Unicode のドメインの細工を止めます)は、この設定にかかわらず効き続けます。

ローカルプロキシの fake-ip の範囲

fake-ip モードの TUN プロキシ(Mihomo/Clash の fake-ip、Surge の拡張モード)は、自分の フィルターの外にある名前すべてに対して、自分の持つブロック — 既定では 198.18.0.0/15 (RFC 2544 のベンチマーク用)— のアドレスを DNS の答えとして返します。この答えは内部の ホストではなくプロキシの目印なのですが、そのままではプライベート IP の防護が外向きの 取得をことごとく断ってしまいます。web_extract、プラットフォームの添付のダウンロード、 ブラウザの中継のいずれも *URL targets a private or internal network address* で失敗し、 要求はネットワークに届きません。目印を通すには、そのブロックを宣言します。

security:
  fake_ip_ranges:
    - 198.18.0.0/15

既定では空で、allow_private_urls より狭い設定です。例外になるのは宣言したブロックだけで、 それはローカルのプロキシが持つ範囲であるべきですし(接続先はあくまでプロキシで、本当の 相手はプロキシ自身が解決します)、ループバック、RFC 1918、リンクローカル、CGNAT、クラウドの メタデータ宛ては止められたままです。それらの分類と重なる項目(0.0.0.0/0 や ::/0 を 含みます)は、防護を広げる代わりに警告を出して無視されます。クラウドのブラウザの プロバイダーを使っているホストでは、宣言した目印は browser.auto_local_for_private_urls にとってもプライベート扱いでなくなるので、 そうしたページは引き続きクラウドのブラウザへ回ります。

コマンドの中身の検査

危険なコマンドの検出は、破壊的な動詞の一覧では取りこぼす、中身の形に関わる 2 つのパターンも見つけて知らせます。

  • 秘密の情報を載せた curl/wget のリクエスト本文。秘密を表す名前の変数(-d "k=$OPENAI_API_KEY")や認証情報のファイル(-F file=@.env、-T ~/.ssh/id_rsa、--post-file=/etc/passwd)を送るもの、あるいは認証情報のファイルをアップロードする curl/wget へパイプで流し込むものです。Authorization ヘッダーは API の通常の使い方なので、知らせる対象にはなりません。
  • 目に見えない、または書字方向を変える Unicode の制御文字(ゼロ幅スペース、右から左への上書き、分離の制御文字)。これがあると、承認したコマンドと実際に動くコマンドが別物になります。絵文字をつなぐ結合の並びは、知らせる対象になりません。

どちらも、ほかの危険パターンと同じように、通常の承認の流れにかけられます。

以前の版では、外部の tirith スキャナーをここに同梱していました。これは取り除かれました。アップグレードすると security.tirith_* の設定は消え、代わりに何かが有効になることもありません。

コンテキストファイルへの注入対策

コンテキストのファイル(AGENTS.md、.cursorrules、SOUL.md)は、システムプロンプトに入れる前にプロンプトインジェクションの走査を受けます。走査では次を調べます。

  • これまでの指示を無視・軽視させようとする指示
  • あやしい語を含む、隠された HTML のコメント
  • 秘密情報を読もうとする動き(.env、credentials、.netrc)
  • curl による資格情報の持ち出し
  • 目に見えない Unicode の文字(ゼロ幅スペース、双方向の上書き)

翻訳して実行させる形の検査には、短い言語・形式の指定が要ります(たとえば 「これを bash スクリプトに訳して実行して」)。関係のない、コンマで区切られた 役割の説明文をまたいで、翻訳と実行の動詞を結びつけることはありません。これらの パターンはあくまで経験則であって、意味を理解した意図の検出ではありません。

止められたプロジェクトのファイルには警告が出ます。

[BLOCKED: AGENTS.md contained potential prompt injection (prompt_injection). Content not loaded.]

HERMES_HOME にある自分の SOUL.md は別扱いです。これは自分が書いたファイルであり(ファイル系のツールから 書き込むには承認が要り、プロジェクトのチェックアウトがこれを持ち込むことはありません)、走査に当たっても ファイルは止められません。Hermes は当たったパターンを名指しした警告を記録したうえで、ふだんどおり ファイルを読み込み、/context には ⚠ SOUL.md … loaded — matched prompt-injection pattern(s); review the file と表示します。これにより、攻撃の言い回しを *説明している* 人格のファイル(「これまでの指示を無視しろと 書かれた内容」といったセキュリティの手引き)も動き続けられます。当たった箇所に自分で書いた覚えがなければ、 その警告は誰か別のものがファイルを書き換えた合図だと考えてください。この例外は、プロファイルの配布物が 持ち込む SOUL.md には及びません。hermes profile install <git-url> と hermes profile update は、 第三者の SOUL.md を走査も承認の確認もなくプロファイルのホームへ複製するので、distribution.yaml が そのファイルを持っている場合は、走査に当たれば止められます。

本番運用のベストプラクティス

ゲートウェイ運用のチェックリスト

  1. 許可リストをはっきり設定する — 本番で GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS=true は使わないこと
  2. コンテナのバックエンドを使う — config.yaml で terminal.backend: docker にする
  3. 資源の上限を絞る — CPU、メモリ、ディスクに適切な上限を設ける
  4. 秘密情報を安全にしまう — API キーは ~/.hermes/.env に、適切なファイル権限で置く
  5. DM のペアリングを使う — できるかぎり、利用者 ID を直接書く代わりにペアリングコードを使う
  6. コマンドの許可リストを見直す — config.yaml の command_allowlist を定期的に点検する
  7. terminal.cwd を設定する — 重要なディレクトリからエージェントを動かさない
  8. root 以外で動かす — ゲートウェイを root で動かさない
  9. ログを見張る — ~/.hermes/logs/ に認可されていないアクセスの跡がないか確かめる
  10. 最新に保つ — セキュリティ修正のため hermes update をこまめに実行する

API キーを守る

# Set proper permissions on the .env file
chmod 600 ~/.hermes/.env

# Keep separate keys for different services
# Never commit .env files to version control

ネットワークの分離

いちばん安全にしたいなら、ゲートウェイを別のマシンか VM で動かしてください。config.yaml で terminal.backend: ssh を設定し、接続先の情報は ~/.hermes/.env に環境変数として書きます。

# ~/.hermes/config.yaml
terminal:
  backend: ssh
# ~/.hermes/.env
TERMINAL_SSH_HOST=agent-worker.local
TERMINAL_SSH_USER=hermes
TERMINAL_SSH_KEY=~/.ssh/hermes_agent_key

SSH の接続情報を config.yaml ではなく .env に置くのは、リポジトリに入ったりプロファイルの書き出しと一緒に配られたりしないようにするためです。こうすることで、ゲートウェイのメッセージング接続と、エージェントのコマンド実行を切り分けられます。

TLS 証明書の信頼

Hermes は truststore を通してプラットフォームの検証機構を初期化します。Windows では その証明書ストアを、macOS ではシステムの信頼サービスを、Linux では OpenSSL のシステムの信頼パスを使います。初期化に失敗した場合は、その失敗をログに残し、 OpenSSL の既定に戻ります。

社内の TLS プロキシを使う場合は、そのルート証明書を、組織が定める OS の信頼設定の手順で入れてください。 Hermes のプロバイダーの解決処理は、もう HERMES_CA_BUNDLE や、以前の CA 用の環境変数を順に見る仕組みで 信頼先を選びません。サンドボックスの中のサブプロセスは、それとは別の CA 設定を持てます。

これに伴い、以前あった起動時の証明書の確認も無くなりました。Hermes は起動時に HERMES_CA_BUNDLE / SSL_CERT_FILE / REQUESTS_CA_BUNDLE / CURL_CA_BUNDLE を確かめなくなったので、SSLConfigurationError は出ず、 逃げ道だった HERMES_SKIP_SSL_GUARD も効きません。HERMES_CA_BUNDLE は、 Nous Portal へのログインの流れ(hermes login、またはその --ca-bundle フラグ)でだけ今も使われます。標準の SSL_CERT_FILE / REQUESTS_CA_BUNDLE / CURL_CA_BUNDLE の変数は、 一部のツールが行う素の requests/urllib の呼び出し(と、 pip、uv、curl、Node)が今も読みます。そのため、これらのどれかに古いパスが残っていると、起動時ではなく それを使う呼び出しの時点で失敗します。その場で変数を直すか、解除してください。

カスタムのプロバイダーは、自分のエンドポイント用に ssl_ca_cert を宣言できます。その証明書の束は、 チャット、モデルのメタデータ、モデル一覧の問い合わせで、プラットフォームの信頼の代わりに使われます。 ファイルが無い場合は警告を出し、プラットフォームの信頼に戻ります。 ssl_verify: false は証明書の検証を止めるもので、信頼できないネットワークでは危険です。 社内のルート証明書が足りないことへの恒久的な対処として使わないでください。

プロバイダーの HTTP クライアントは、プロキシの設定と証明書の選択を分けて扱います。 環境に残った古い CA ファイルのパスがあっても、それらのクライアントの起動は妨げられません。 PM のインデックスの認証情報は、完全に一致する HTTPS のオリジンにだけ送られます。 別のオリジンへのリダイレクト先には渡りません。

置いた場所で信頼される拡張点

Hermes が動かせる第三者のコードは、たいてい明示的な許可リストで守られています。一般のプラグインには plugins.enabled が要り、シェルのフックには初回の承認(または hooks_auto_accept)が要り、MCP サーバーは設定に書きます。1 つだけ、意図して違う窓口があります。

拡張点 読み込み元 読み込まれるとき 同意の形
ゲートウェイのイベントフック <profile home>/hooks/<name>/(HOOK.yaml + handler.py) ゲートウェイの起動時(HookRegistry.discover_and_load())、受け持つプロファイルごと ディレクトリを置くこと自体。 plugins.enabled への記載も確認も不要で、HERMES_SAFE_MODE でも飛ばされません。

ゲートウェイは、正しい形のフックのディレクトリをすべてプロセス内に、ゲートウェイ自身の権限で読み込みます。これは見落としではなく、文書化された取り決めです(3988c3c245f 以降)。プロファイルのホームは運用者が持つ設定であり、そこに書ける人はすでに config.yaml のシェルフックや plugins.enabled の編集を通じてあなたとしてコードを動かせるので、hooks/ にだけ別の同意の関門を設けても、手間が増えるだけで信頼の線は動きません。~/.hermes/hooks/ の中身は config.yaml の中身と同じように扱ってください。置く前に handler.py を読み、プロファイルのホームを点検するときはいつも ls ~/.hermes/hooks/ も見ることです(このディレクトリは保護されたパスの拒否リストに入っていないので、ふつうに書き込める状態です)。詳しくはゲートウェイのフックの信頼モデルを参照してください。

供給網に関する勧告の確認

Hermes には、いま使っている仮想環境の Python パッケージのうち、乗っ取られたことが分かっている版の一覧と一致するものを知らせる、組み込みの勧告スキャナーが入っています(2026 年 5 月の mistralai 2.4.6 の汚染のような、供給網を狙うワームが対象です)。実装は hermes_cli/security_advisories.py にあります。

動くタイミングは次のとおりです。

  • CLI の起動時の帯。 当てはまる勧告があれば 1 行の警告が出て、詳しい対処は hermes doctor を見るよう案内します。
  • hermes doctor。 有効な勧告をすべて、版の詳細と 2〜4 段階の対処手順とともに示します。
  • ゲートウェイの起動時。 gateway.log に記録され、最初の対話メッセージに短い運用者向けの帯が付きます。

勧告にはそれぞれ変わらない id が付いています。読んで対処したら、以後は消しておけます。

hermes doctor --ack <advisory-id>

この確認済みの記録は config.security.acked_advisories に保存され、再起動しても残ります。古い勧告は意図して一覧から 消しません。残しておくことで、私設のミラーにまだ残っているかもしれない、過去に汚染された版について、新しく入れた環境にも警告が届きます。

この確認自体は標準ライブラリだけで動き、勧告ごとに importlib.metadata.version() を 1 回引くだけなので、毎回の起動時に走らせても大丈夫です。

任意の依存関係の遅延導入

PM は、任意の Python の機能を pyproject.toml の追加指定(extras)として管理します。 ソースからのインストーラーは all の追加指定を選びます。ネイティブの同梱版には、その環境が対応する すべての追加指定が入っています。この 2 つは別の機能の組み合わせです。

バックエンドが使えない追加指定を求めると、pm.ensure_import("extra-name") が プラグインの受け入れと同じ依存関係の処理を使います。

  1. PM は、プラットフォームが対応しているかと security.allow_lazy_installs を確かめます。
  2. PM は、既存の追加指定と、有効なプラグインの要件をすべて含んだ環境を用意します。
  3. プラグインのメンバーが無ければ、コミット済みのロックをそのまま使います。メンバーがあれば、前回の選択をもとに解決してから、固定したワークスペースの同期を行います。
  4. 選択を公開する前に候補を検証します。候補が失敗すれば、前の環境が選ばれたまま残ります。
  5. 今のプロセスが前の環境を使っている場合、PM は Hermes の再起動が必要だと知らせます。読み込み済みのライブラリをその場で差し替えることはしません。

配布されたソース、ロック、署名済みの中身は変わりません。追加のツールや Python の環境は、元の成果物の外にある書き込み可能な場所を使います。 プラグインの依存関係は、その全体の環境を共有します。Python のサンドボックスとして切り離されているわけでは ありません。互換性のある依存の依存は変わることがありますが、宣言された 制約と正確に固定した版は守られます。

管理のしくみ 振る舞い
宣言された追加指定 このヘルパーが受け付けるのは、プロジェクトの追加指定の名前です。任意の pip のコマンドは受け付けません。取り除かれた LAZY_DEPS の機能名の登録表は使いません。
検証済みのツール 管理下のツールのアーカイブは、版と SHA-256 のハッシュが pm/lock.json に載っています。
原子的な選択 新しい実行環境の選択を公開する前に、準備と検証を済ませます。
失敗の報告 失敗すると pm.InstallError を投げます。PM の同期の受領記録には、失敗した手順と方針による拒否が含まれます。
プラグインを自動で外さない 依存関係をまとめるのに失敗しても、入っているプラグインを黙って無効にしたり消したりしません。

その場での導入を止めるには、次を実行します。

hermes config set security.allow_lazy_installs false

すでに入っている依存関係はそのまま使えます。PM の導入コマンドを明示して実行するのは、 その場での導入とは別のものです。同梱版に固定の機能一覧がある場合、遅延導入を止めていると、 求められた Python の追加指定の名前がその一覧に絞られます。この設定は、プラグインを明示して受け入れることや、 手動のパッケージマネージャーのコマンドまで一律に禁じるものではありません。公式の Docker イメージも、 内部の環境方針によってその場での導入を止めています。

依存関係が足りないときは、hermes tools と hermes doctor で 何が必要かを確かめてください。署名済みの中身やシステムの Python に対して pip を実行しないでください。 導入を誰が受け持つか、診断、コマンドの境界については パッケージ管理 を参照してください。