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セッションのライフサイクル

目次

> 対象読者: ゲートウェイの開発者とメンテナー > ソースファイル: gateway/session.py(約1200行 + 兄弟ファイルの session_*.py)、gateway/run.py(約5500行のファサード + 各フェーズの run_*.py)、gateway/config.py > 最終更新: 2026-06-16

概要

セッションとは、メッセージングプラットフォーム上でエージェントと1人以上のユーザーが続けている、ひと続きの会話のことです。 セッションのライフサイクルは、会話をいつ保持し、いつリセットするか、 ゲートウェイの再起動をどう乗り越えるか、同時に処理が走っているあいだメッセージをどうキューに積むかを決めています。

セッションの仕組みは主に2つのモジュールにあります。

  • gateway/session.py — データモデル(SessionSource、SessionEntry、SessionContext)、

キーの生成(build_session_key)、メインのストア(SessionStore)。

  • gateway/run.py — ゲートウェイランナー(GatewayRunner)のファサードで、セッションをメッセージ処理の

パイプラインにつなぎます。各フェーズは兄弟ファイルの run_*.py にあります。セッションの定期整理 (run_watchers.py)、エージェントのキャッシュ(run_agent_cache.py)、再起動からの復旧 (session_recovery.py)、メッセージのキューイング(run_busy.py)です。


1. SessionSource — メッセージの出どころを表す記述子

SessionSource は、*メッセージがどこから来たか*を記録した変更不可のレコードです。受信するすべての MessageEvent に付与され、ルーティング、分離、コンテキストの注入に使われます。

フィールド

フィールド 型 既定値 説明
platform Platform *(必須)* メッセージングプラットフォームを識別する列挙型(telegram、discord、slack、signal、whatsapp、matrix、local など)。
chat_id str *(必須)* プラットフォーム側のチャット/グループ/チャンネルの識別子。アダプターの chat_id_key 変換を通して扱われます。
chat_name Optional[str] None チャットやグループの、人が読める名前。
chat_type str "dm" "dm"、"group"、"channel"、"thread" のいずれか。セッションキーの生成と分離の方法を決めます。
user_id Optional[str] None プラットフォーム固有のユーザー識別子。認可と、ユーザーごとのセッション分離に使われます。
user_name Optional[str] None メッセージ送信者の表示名。システムプロンプトに注入されます。
thread_id Optional[str] None フォーラムのトピック/Discord のスレッド/Slack のスレッドの識別子。スレッド内の会話を区別します。
chat_topic Optional[str] None チャンネルのトピックや説明(Discord のチャンネルトピック、Slack のチャンネルの目的)。
user_id_alt Optional[str] None プラットフォーム固有の、変わらない代替 ID(Signal の UUID、Feishu の union_id)。user_id が一時的なものの場合に使われます。
chat_id_alt Optional[str] None Signal グループの内部 ID。Signal グループ V2 の識別子を正規の形に対応づけます。
is_bot bool False メッセージの送信者がボットや Webhook(Discord のボット)のとき True。
guild_id Optional[str] None Discord のギルド/Slack のワークスペース/Matrix のサーバーという範囲を示す識別子。
parent_chat_id Optional[str] None chat_id がスレッドを指すときの、親チャンネル。
message_id Optional[str] None きっかけになったメッセージの ID。ピン留め/返信/リアクションの操作と、Discord の ID 注入に使われます(注入される [Triggering message id: …] の注記が乗るのは API へ送るメッセージだけで、保存される user の行は書かれたままの本文を保ちます)。
role_authorized bool False アダプターが(個々のユーザー ID ではなく)プラットフォームのロールによってアクセスを許可したとき True。

主なメソッド

  • description(プロパティ: str)— 人が読める要約。例: "DM with Alice"、

"group: My Group, thread: 12345"。

  • to_dict() / from_dict() — sessions.json に保存するためのシリアライズと復元の往復。

2. SessionEntry — 有効なセッションの記録

SessionEntry はセッションごとのメタデータの記録で、メモリ上に置かれ、 {sessions_dir}/sessions.json に保存されます。各エントリーは session_key を、そのときの session_id に対応づけます。

フィールド

フィールド 型 既定値 説明
session_key str *(必須)* 会話のレーンを識別する、決定的なキー(§4 を参照)。
session_id str *(必須)* この会話の、この回の実体を表す一意の識別子。形式: YYYYMMDD_HHMMSS_<8hex>。
created_at datetime *(必須)* この回のセッションが作られた日時。
updated_at datetime *(必須)* 最後に動きがあった日時。リソースの定期整理に使われます。
origin Optional[SessionSource] None このセッションを作った出どころ。配信先のルーティングに使われます。
display_name Optional[str] None チャットの表示名(SessionSource.chat_name から取得)。
platform Optional[Platform] None 再起動をまたいでルーティングできるよう保存される、プラットフォームの列挙値。
chat_type str "dm" チャットの種類。ポリシーの参照用にこれも保存されます。
input_tokens int 0 消費した LLM の入力(プロンプト)トークンの累計。
output_tokens int 0 消費した LLM の出力(補完)トークンの累計。
cache_read_tokens int 0 プロンプトキャッシュの読み取りトークンの累計。
cache_write_tokens int 0 プロンプトキャッシュの書き込みトークンの累計。
total_tokens int 0 全ターンを通したトークンの合計数。
estimated_cost_usd float 0.0 推定の累計コスト(USD)。
cost_status str "unknown" コスト追跡の状態を表すラベル。
last_prompt_tokens int 0 API が最後に報告したプロンプトのトークン数。圧縮の事前チェックを正確に行うために使われます。

真偽値フラグ(状態機械)

SessionEntry にはいくつかの真偽値フラグがあり、次にアクセスされたときのセッションの 振る舞いを決める、簡単な状態機械になっています。

フラグ 型 既定値 説明
was_auto_reset bool False 明示的な一時停止によって代わりのセッションが作られたときに立ちます。過去の記録のためにも残されています。
auto_reset_reason Optional[str] None 明示的な一時停止なら "suspended"。古い行には過去のリセット理由が残っていることがあります。
reset_had_activity bool False 置き換えられたセッションに、それまでの動きがあったかどうか。
is_fresh_reset bool False 明示的な /new や /reset で立ちます。最初のメッセージで、トピック/チャンネルのスキルを再注入するきっかけになります。紛らわしい「セッションの期限が切れました」という通知を避けるため、was_auto_reset とは区別されています。
expiry_finalized bool False 復旧のために残されている、過去の確定済みの境界。タイマーがこれを書き込むことはありません。
suspended bool False 強制的に消去するための強いシグナル。/stop か、ループが止まらないときのエスカレーション(再起動の失敗が3回以上連続)で立ちます。次の get_or_create_session() で、resume_pending にかかわらず新しい session_id を強制します。
resume_pending bool False 穏やかな復旧のためのマーカー。recover_interrupted_turns()(印の付いた、まだ返事をしていないターンのクラッシュからの復旧)か、ドレインのタイムアウトで立ちます。次にアクセスされたとき、既存の session_id を保ち、ユーザーは同じトランスクリプトのまま続けられます。次のターンが無事に終わった後に解除されます。
resume_reason Optional[str] None 再開の印を付けた理由: "restart_timeout"、"shutdown_timeout"、"restart_interrupted"。
last_resume_marked_at Optional[datetime] None 最後に再開待ちの印を付けた日時。

状態遷移のロジック(get_or_create_session)

                    ┌──────────┐
                    │  Incoming │
                    │  Message  │
                    └────┬─────┘
                         │
                         ▼
              ┌──────────────────────┐
              │  session_key exists  │──── No ──► Create fresh SessionEntry
              │  AND !force_new      │
              └──────────┬───────────┘
                         │ Yes
                         ▼
              ┌──────────────────────┐
              │  entry.suspended?    │──── Yes ──► Auto-reset: new session_id
              └──────────┬───────────┘           (reason="suspended")
                         │ No
                         ▼
              ┌──────────────────────┐
              │ entry.resume_pending?│──── Yes ──► Return existing entry
              └──────────┬───────────┘           (preserve session_id)
                         │ No                     Clear flag on next successful turn
                         ▼
              ┌──────────────────────┐
              │   Policy says reset? │──── Yes ──► Auto-reset: new session_id
              └──────────┬───────────┘           (reason="idle"/"daily")
                         │ No
                         ▼
              ┌──────────────────────┐
              │  Return existing     │
              │  entry, bump         │
              │  updated_at          │
              └──────────────────────┘

get_or_create_session() での優先順位:

  1. suspended=True → 常に強制リセット(強い消去)
  2. resume_pending=True → session_id を保つ(穏やかな復旧)
  3. きっかけなし → 既存のエントリーを返す(updated_at を更新)

3. SessionStore — 保存と操作

SessionStore はメインの保存層です。メモリ上の辞書(_entries)を持って sessions.json に保存し、セッションのメタデータとメッセージのトランスクリプトについては SQLite(SessionDB)を正本のストアにしています。

コンストラクター

SessionStore(sessions_dir: Path, config: GatewayConfig, has_active_processes_fn=None)
  • sessions_dir — sessions.json を置くディレクトリ。
  • config — ルーティングと定期整理の設定を持つ GatewayConfig のインスタンス。
  • has_active_processes_fn — 動いているバックグラウンドプロセスがあるかを session_key ごとに確かめる、

任意のコールバック。プロセスが動いているセッションは、ルーティングエントリーの削除から守られます。

操作(メソッド)

メソッド 説明
get_or_create_session(source, force_new=False) 中核の入口。既存の SessionEntry を返すか、新しく作ります。明示的な一時停止と、再起動からの復旧の状態を評価します。SQLite のレコードを作成/終了します。
update_session(session_key, last_prompt_tokens=None) やり取りの後に行う、軽いメタデータの更新。updated_at を更新し、必要に応じて last_prompt_tokens を記録します。
reset_session(session_key, display_name=None) 明示的なリセット(/new や /reset から)。新しい session_id を作り、is_fresh_reset=True を立てます。古い SQLite セッションを終えて、新しいものを作ります。
switch_session(session_key, target_session_id, *, expected_session_id=None) 別の既存セッション ID に切り替えます(/resume から)。現在の SQLite セッションを終え、切り替え先を開き直します。expected_session_id= を付けると、向き先の付け替えは比較してから入れ替える形になります。キーがそのセッションを指さなくなっていた場合は、切り替えずに None を返します。これにより、await をまたいで古い写しを元に解決した呼び出し側(非同期の委任による付け直し、Telegram のトピック結び付けの修復)が、同時に走った /new や /resume を上書きできないようにします。
suspend_session(session_key) セッションに suspended=True の印を付けます(/stop から)。次のアクセスで自動リセットを強制します。
mark_resume_pending(session_key, reason) セッションに resume_pending=True の印を付けます(ドレインのタイムアウトから)。次のアクセスで session_id を保ちます。suspended=True を上書きすることはありません。
clear_resume_pending(session_key) 再開したターンが無事に終わった後、resume_pending を解除します。run_conversation() が戻った後にゲートウェイから呼ばれます。
recover_interrupted_turns(max_age_seconds) クラッシュからの復旧: 落ちたプロセスが残した、永続化された実行中ターンの印を resume_pending=True(restart_interrupted)に格上げします。印のないセッションはターンを終えているので、手を付けません。正常に終了しなかった後の起動時に呼ばれます。
prune_old_entries(max_age_days) max_age_days より古いエントリー(updated_at を基準)を削除します。suspended のエントリーと、プロセスが動いているセッションは飛ばします。
list_sessions(active_minutes=None) すべてのセッションを返します。最近の動きで絞り込むこともできます。updated_at の降順で並びます。
lookup_by_session_id(session_id) 保存されているセッション ID に対応する、有効な SessionEntry を探します。
has_any_sessions() これまでにセッションが1つでも作られたかを確かめます(メモリ上の辞書だけでなく、履歴として SQLite も使います)。
append_to_transcript(session_id, message, skip_db=False) SQLite のトランスクリプトにメッセージを追記します。skip_db=True にすると、エージェントがすでに保存済みの場合の二重書き込みを防ぎます。
rewrite_transcript(session_id, messages) セッションのトランスクリプトを丸ごと置き換えます(/retry、/undo、/compress で使われます)。
load_transcript(session_id) セッションの SQLite トランスクリプトから、すべてのメッセージを読み込みます。
rewind_session(session_id, n=1) 論理削除(監査の記録は残ります)で、ユーザーのターンを n 回分さかのぼります。SessionDB.rewind_user_turn(hermes_state_rewind.py)の薄いラッパーで、CLI の /undo//retry や TUI と共通の、ただ1つの巻き戻し処理です。{rewound_count, turns_undone, target_text} を返します。

内部ヘルパー

  • _ensure_loaded() / _ensure_loaded_locked() — sessions.json を _entries 辞書に読み込みます。
  • _save() — 一時ファイルと atomic_replace を使い、sessions.json に原子的に書き込みます。
  • _generate_session_key(source) — 設定のパラメーターを付けて build_session_key() に処理を任せます。

保存のレイアウト

{sessions_dir}/
  sessions.json          # In-memory _entries dict, persisted as JSON
                           Maps session_key → SessionEntry (metadata only)
  {session_id}.jsonl     # (Legacy, removed in spec 002)

トランスクリプトの正本のストアは、SessionDB(hermes_state から)経由の SQLite です。 sessions.json ファイルには、session_key → session_id の対応と、エントリーのメタデータ (フラグ、日時、トークン数)が保存されます。SQLite が使えないときストアは JSONL に切り替えますが、これは機能を落として動かすための経路です。


4. セッションキーの生成規則

セッションキーは、会話のレーンを識別する決定的な文字列です。 build_session_key(source, group_sessions_per_user, thread_sessions_per_user) によって生成されます。

キーの形式

agent:main:{platform}:{chat_type}[:{chat_id}][:{thread_id}][:{participant_id}]

DM の規則

場面 キー
chat_id がある DM agent:main:telegram:dm:12345
chat_id とスレッドがある DM agent:main:telegram:dm:12345:thread_678
chat_id がなく、participant_id がある DM agent:main:signal:dm:user_abc
chat_id も participant_id もない DM agent:main:telegram:dm
WhatsApp の DM(正規化済み) agent:main:whatsapp:dm:{canonical_number}
  • DM では chat_id があれば必ずキーに含め、個々の非公開の会話を分けます。
  • 同じ DM チャットの中でスレッドに分かれた DM は、thread_id でさらに区別します。
  • chat_id がない場合は、user_id_alt か user_id を participant_id として代わりに使います。
  • 識別子がまったくない場合、そのプラットフォームのすべての DM が1つの共有セッションにまとまります。

グループ/チャンネルの規則

場面 キー
グループチャット agent:main:telegram:group:-10012345
グループチャット、ユーザーごとに分離 agent:main:telegram:group:-10012345:user_abc
グループ内のスレッド、共有 agent:main:discord:group:12345:thread_678
グループ内のスレッド、ユーザーごと agent:main:discord:group:12345:thread_678:user_abc
チャンネル agent:main:slack:channel:C12345
WhatsApp のグループ(正規化済み) agent:main:whatsapp:group:{canonical_id}:{participant}
  • chat_id は親のグループ/チャンネルを識別します。
  • thread_id は、その親の中のスレッドを区別します。
  • ユーザーごとの分離(participant_id を末尾に付ける)は、次の設定で決まります。
    • group_sessions_per_user(既定: True)— グループ/チャンネルのセッションは分離されます。
    • thread_sessions_per_user(既定: False)— スレッドは既定で共有されます

(Telegram のフォーラムトピック、Discord のスレッド、Slack のスレッドは、どれもスレッドごとに1つのセッションを共有します)。

  • participant_id = user_id_alt または user_id(この優先順)。
  • WhatsApp の識別子は、JID と LID の別名が入れ替わっても扱えるよう正規化されます。

特殊なケース: WhatApp

WhatsApp の電話番号は canonical_whatsapp_identifier() を通り、 @s.whatsapp.net という接尾辞を取り除いたうえで E.164 形式にそろえられます。これにより、ブリッジが 同じ電話番号を別名の形で返したときに、セッションがばらばらに分かれるのを防ぎます。


5. マルチユーザーの分離方針

マルチユーザーの分離は、同じチャットにいる複数のユーザーが1つの会話を共有するか、 それぞれが自分専用のセッションを持つかを決めるものです。

判定ロジック(is_shared_multi_user_session)

def is_shared_multi_user_session(source, *, group_sessions_per_user, thread_sessions_per_user):
    if source.chat_type == "dm":
        return False  # DMs are always private
    if source.thread_id:
        return not thread_sessions_per_user  # Threads: shared unless per-user
    return not group_sessions_per_user       # Groups: isolated unless shared

まとめ

チャットの種類 既定 設定での制御
DM 非公開(共有されない) なし
グループ/チャンネル ユーザーごとに分離 group_sessions_per_user(既定: True)
スレッド(フォーラム、discord) 共有(参加者全員が同じコンテキストを見る) thread_sessions_per_user(既定: False)

システムプロンプトへの影響

shared_multi_user_session=True のとき、システムプロンプトには決まったユーザー名を入れず、代わりに *「マルチユーザーの \{thread|session\} です。メッセージの先頭には [送信者名] が付きます。複数の ユーザーが参加することがあります。」*という内容を書きます。個々の送信者名は、ゲートウェイが実行時に 各ユーザーメッセージの先頭に付けるので、プロンプトキャッシュは保たれます(システムプロンプトはターンごとに変わりません)。


6. 会話の明示的な区切り

動きがない時間や時計の時刻によって、会話が切り替わることはありません。/new と /reset が 明示的な区切りを作り、長い履歴は引き続きコンテキストの圧縮が管理します。 古いタイマーの設定は無視されます。

明示的な一時停止は、今も次に届いたターンで区切りを作ります。復旧処理は、 明示的な区切りと過去に確定済みの区切りを尊重し、それらを開き直すことはしません。 リソースだけを解放する退避や、WebSocket の孤立した接続の回収では、会話は再開できる状態のまま残ります。


7. 再起動からの復旧の流れ

再起動からの復旧の仕組みは、処理の途中にあるセッションを、ゲートウェイの 再起動、クラッシュ、ドレインのタイムアウトをまたいで保つためのものです。issue #7536 への解決策です。

起動時の復旧手順

Gateway starts
       │
       ▼
┌───────────────────────────────┐
│ Check for .clean_shutdown     │── Exists? ──► Skip suspension (clean exit)
│ marker                        │
└───────────────────────────────┘
       │ Missing
       ▼
┌───────────────────────────────┐
│ _recover_unclean_sessions()   │── Marked turn with a persisted reply
│                               │   → delivery ledger (sent, marked);
│                               │   marked turn without one →
│                               │   resume_pending (once)
└───────────────────────────────┘
       │
       ▼
┌───────────────────────────────┐
│ _suspend_stuck_loop_sessions()│── Suspends sessions that have been
│                               │   active across 3+ restarts
└───────────────────────────────┘
       │
       ▼
┌───────────────────────────────┐
│ Queue inbound messages while  │
│ startup restore runs          │
│ (_startup_restore_in_progress)│
└───────────────────────────────┘
       │
       ▼
┌───────────────────────────────┐
│ For each adapter, find        │
│ resume_pending sessions →     │
│ synthesize MessageEvent and   │
│ run _handle_message to let    │
│ the agent auto-continue       │
└───────────────────────────────┘

クラッシュからの復旧(_recover_unclean_sessions)

.clean_shutdown マーカーがない(クラッシュや予期しない終了があった)とき、ゲートウェイの 起動時に呼ばれます。判断の材料にするのは、永続化された実行中ターンの印だけで、最近動いたかどうかは 見ません。クラッシュの少し前に動いていただけのチャットは、そのターンを終えているので、もう一度 返事をすることはありません。

この印はターンが始まったときに付き、最終的な返事が配達台帳に載るまで(アダプターは record_delivery_obligation の直後に印を外します)、または届けるべきものがもう無くなるまで (ストリーミングで返した、抑止された、空の応答だった)残ります。つまり、起動時に印が残っていれば、 次の2つのどちらかを意味します。

  • 返事は保存されたが、台帳には載らなかった。 保存されたトランスクリプトの返事を、持ち主のいない

台帳の行として記録し、印を外します。起動時の一掃がそれを「Recovered reply」の知らせを付けて1回だけ 届けます。ターンは作り直しません。返事は、通常の配達で判断されるのと同じやり方で判断されます。 内部のターンに対する沈黙の印だけの返事([SILENT]、NO_REPLY など)や、チャットの方針が消音に している診断用の起こしへの返事には、届けるべきものがありません(印を外し、何も送らず、再開も しません)。人間のターンに対する沈黙の印だけの返事は、通常の経路が送るのと同じ「沈黙の印しか 返さなかった」という知らせになります。

  • 返事が保存されていなかった。 recover_interrupted_turns() が resume_pending=True、

resume_reason="restart_interrupted" を設定し、そのターンは1回だけ自動で再開します。

印の開始時刻はタイムゾーン付きの UTC で保存し、エポック秒で比べます。そのため、別のローカルの タイムゾーンで再起動しても(夏時間の切り替え、コンテナとユニットの TZ の違い)、新しい印を古いと みなして捨てることも、前のターンの返事をこのターンの返事として取り込むこともありません。古いビルドが 書いた印(タイムゾーンなしのローカル時刻)は、ホストのローカル時刻として読みます。

すでに台帳に載っているターンは台帳の一掃が届け直し、その一掃はそのセッションの resume_pending も 外します。そのため、届けたうえでさらに返事をし直すことはありません。

止まらないループの検出(_suspend_stuck_loop_sessions)

連続した再起動の回数を JSON ファイル({HERMES_HOME}/restart_counts.json)で数えます。 あるセッションが3回以上連続した再起動をまたいで動いていた場合、自動的に一時停止され、ユーザーは まっさらな状態からやり直せます。

ドレインのタイムアウト時の印付け

正常なシャットダウン/再起動のとき、ドレインのタイムアウトが来た時点でターンの途中だったセッションには、 ドレインの仕組みが mark_resume_pending() を呼びます。理由は次のとおりです。

  • "restart_timeout" — 再起動のドレイン中に強制終了された
  • "shutdown_timeout" — シャットダウンのドレイン中に強制終了された
  • "restart_interrupted" — 印の付いた、まだ返事をしていないターンのクラッシュからの復旧(recover_interrupted_turns から)

3つの理由はすべて _AUTO_RESUME_REASONS に含まれ、起動時の自動再開の対象になります。

次のアクセスでの自動再開

get_or_create_session() が resume_pending=True に出会ったときの動きです。

  1. 新しい session_id を作らずに、既存のエントリーを返します。
  2. 既存のトランスクリプトがそのまま読み込まれます。
  3. 印はここでは解除されません。次のターンが無事に終わるまで残ります

(run_conversation() が実際の応答を返した後に、ゲートウェイから clear_resume_pending() が 呼ばれます)。

  1. 再開したターンがまた中断された場合、resume_pending フラグは立ったまま残り、

次の再起動で再試行されます。最終的なエスカレーションは、止まらないループのカウンターが担います (3回の再試行 → 一時停止)。

正常終了のマーカー(.clean_shutdown)

正常なシャットダウンの最後に書き込まれます。次の起動時の動きは次のとおりです。

  • あれば: クラッシュからの復旧をまるごと飛ばし、持ち主のいないターンの印を捨てます。動いていた

エージェントはすでにドレイン済みなので、止まったままのセッションはありません。

  • そのあとマーカーを削除します。

これにより、hermes update、hermes gateway restart、 /restart の後に、意図しない自動リセットが起きるのを防ぎます。


8. メッセージのキューイングの流れ

メッセージのキューイングの仕組みは、2つの場面を扱います。

  1. 割り込みの続きのメッセージ — エージェントが処理しているあいだにユーザーが複数のメッセージを

送ると、後続のメッセージは1枠だけの保留メッセージとしてキューに積まれます。

  1. /queue の FIFO — 明示的な /queue コマンド。それぞれが、まとめられることなく順番どおりに、

エージェントの完全なターンを1回ずつ生む必要があります。

データ構造

adapter._pending_messages: Dict[session_key, MessageEvent]
    └── Single "next-up" slot per session. Overwritten on repeat sends
        (burst collapse). Shared with photo-burst follow-ups.

self._queued_events: Dict[session_key, List[MessageEvent]]
    └── Overflow buffer. Each /queue invocation appends here when the
        slot is occupied. Promoted one-at-a-time after each drain.

キューへの追加(_enqueue_fifo)

_enqueue_fifo(session_key, event, adapter)
       │
       ▼
┌───────────────────────────────────────┐
│ Is slot free?                         │
│ (session_key NOT in _pending_messages)│── Yes ──► Place event in slot
└───────────────────────────────────────┘
       │ No
       ▼
Append to _queued_events[session_key] (overflow tail)

キューからの取り出し/繰り上げ(_promote_queued_event)

枠が消費された後、ドレインの箇所で呼ばれます。あふれた分の項目がある場合の動きです。

  • pending_event is None(枠が空だった)のときは、あふれた分の先頭を新しいイベントとして返します。
  • pending_event があるときは、あふれた分の先頭を次の再帰のために枠へ置いておきます。
  • 使えるアダプターがない場合は、_queued_events に戻します(黙って捨てません)。

キューの深さ

_queue_depth(session_key, adapter) は len(overflow) + (1 if slot occupied else 0) を返します。

消去

セッションのキューに積まれたイベントは、/new と /reset で(_handle_reset_command を通じて)消去されます。 /stop は、中断されたターンの最中に利用者が送った 1 枠だけの追いかけメッセージを捨てます。 どちらの置き場にあっても、内部の呼び起こし(非同期の委任の完了通知、かんばんや cron の notify+wake)は 3 つのコマンドすべてを生き延びます。_interrupt_and_clear_session はそれを枠に 残し(捨てられた人間の追いかけメッセージが枠を占めていた場合は、あふれの側から枠へ繰り上げます)、 コマンドのあとの掃き出しがすぐにそれを始めます。セッションが次の利用者のメッセージまで 止まったままにならないようにするためです。/new が閉じたばかりのセッションに結び付いた 呼び起こしを動かしてよいかどうかは、処理の時点で決まります(_resolve_async_delegation_session。 判断できないときは動かしません)。

どちらのコマンドも、そのセッションのバックグラウンドの委任を終わらせます(tools.async_delegation. interrupt_for_session を、ルーティングキーと、起動した側の永続的なセッション ID で選びます)。 処理中の経路には _interrupt_and_clear_session が停止を配り、委任を出したターンがすでに終わっている 待機中のセッションには _handle_stop_command が同じことをします(「No active task to stop」ではなく 「Stopped」と返します)。ターン自身の強い中断は、こうした単位には届きません。委任した時点で _active_children から切り離されているからです。この配り直しがなければ、それらは最後まで走り切り、 数分後にチャットを呼び起こしてしまいます。停止された単位もふつうどおり後始末をして、 status="interrupted" と子の途中までの出力を持つ完了通知として戻ってきます。/new と /reset は これを _handle_reset_command の中ですでに済ませていて、共有のヘルパーによる先の呼び出しは そこでは何度行っても同じです(強い中断を 2 回頼んでも、停止は 1 回です)。

FIFO の不変条件

/queue を1回呼ぶと、エージェントの完全なターンがちょうど1回、FIFO の順で、まとめられることなく 生まれます。1枠の _pending_messages とあふれた分を受ける _queued_events という設計によって、 ターンの最中にメッセージを繰り返し送っても、処理の順番が入れ替わらないようになっています。


9. セッションコンテキストの注入

SessionContext は SessionSource と GatewayConfig から組み立てられ、エージェントの システムプロンプトに注入されます。これによってエージェントは次のことを知ります。

  • いまのメッセージがどこから来たか
  • どのプラットフォームが接続されているか
  • 定期タスクの出力をどこへ届けられるか
  • これが共有のマルチユーザーセッションかどうか

組み立て(build_session_context)

def build_session_context(source, config, session_entry=None) -> SessionContext
  1. 設定から、接続されているプラットフォームを集めます。
  2. 各プラットフォームのホームチャンネルを集めます。
  3. is_shared_multi_user_session() で shared_multi_user_session を判定します。
  4. session_entry が渡されていれば、セッションのメタデータ(キー、ID、日時)を付けます。

個人情報の伏せ字化(build_session_context_prompt)

システムプロンプトの動的な部分(## Current Session Context)では、LLM に送る前に 個人を特定できる情報を伏せることができます(任意)。

  • ユーザー ID → user_<12hex>(SHA-256 の先頭部分)
  • チャット ID → <platform>:<12hex> または単に <12hex>
  • 伏せ字化の対象外になるプラットフォーム: Discord(@mentions に生の ID が必要なため)と、

プラグインで登録されたプラットフォームのうち pii_safe の印がないもの。

伏せ字化が効くのはシステムプロンプトの文面だけです。ルーティング、セッションキー、アダプターの 操作では、常に元の値が使われます。


10. バックグラウンドでの定期整理

_session_housekeeping_watcher は定期的に、動きのないキャッシュ済みエージェントを片付け、 メモリが逼迫したときにはキャッシュのエントリーを手放し、古いルーティングエントリーを1時間ごとに削除します。 動きがないことや時刻を理由に、トランスクリプトを終わらせることはありません。

TTL、LRU、メモリ逼迫による退避では、クライアントを穏やかに解放する前に、動いているトランスクリプトを メモリプロバイダーに書き込みます。進行中のターンは守られたままで、ターミナル、ブラウザー、バックグラウンド プロセスのリソースは、穏やかな解放の後も残ります。ルーティングエントリーの削除では正本の SQLite トランスクリプトが保たれ、動いているプロセスは自分のルーティングエントリーを削除から守ります。 過去の expiry_finalized フラグは復旧のための境界として残りますが、 タイマーの監視役がこれを書き込むことはもうありません。


11. エージェントのキャッシュ

ゲートウェイは、ターンをまたいでプロンプトキャッシュを保つために、session_key をキーにした AIAgent インスタンスの LRU キャッシュを持っています。

キャッシュの特性

  • 最大サイズ: 128エントリー(agent.agent_cache.max_size、既定値は _AGENT_CACHE_MAX_SIZE)。
  • 退避の方針: 最も長く使われていないものから(OrderedDict による LRU)。
  • アイドル TTL: 3600秒(1時間)— agent.agent_cache.idle_ttl_secs。

_session_housekeeping_watcher が適用します。

  • メモリの予算: agent.agent_cache.memory_high_mb(既定 auto)— 下記を参照。
  • ロック: スレッド安全のための _agent_cache_lock(threading)。

メモリ逼迫による退避

キャッシュされたエージェントは _session_messages を抱えています。これはツールの出力を含む、動いている トランスクリプトの全体で、ツール呼び出しが100回を超えるセッションでは数十 MB になります。エントリー数の上限も アイドル TTL も、この大きさは見ていません。多くのチャットを受け持つゲートウェイは、温まったトランスクリプトを すべてメモリに置いたままにします(TTL 内にターンがあったエージェントは、アイドルとして片付けられません)。 そのため RSS は増え続け、やがて cgroup が絞り込みを始め、SIGTERM を受けても systemd の停止タイムアウト内に 書き出しを終えられなくなります(#80764)。

_sweep_agent_cache_under_pressure() はその逃がし弁です。監視役が動くたびに、 匿名メモリを memory_high_mb と比べます。ゲートウェイが cgroup の上限の下で動いているときは cgroup 自身の memory.stat の anon(予算が課される範囲なので、同じユニットの子プロセス、 たとえば execute_code のカーネルも数に入ります。#110549)を、そうでなければプロセス自身の匿名 RSS を使います。予算を超えていれば、上限の適用と同じ 穏やかな経路(_commit_then_release_soft)で LRU のエージェントを退避させ、そのあと malloc_trim を実行して、解放したアリーナが実際に OS へ返るようにします。退避されたセッションは、 次のターンで保存済みのセッションからトランスクリプトを組み立て直します。

次の3種類のセッションは、決して手放されません。

  • ターンの途中にあるエージェント(クライアントとサンドボックスが使用中のため)
  • 最も最近使われた protect_recent 個のセッション(プロンプトキャッシュの価値が

最も高いため)

  • 動いているトランスクリプトがまだディスクに書き終わっていないセッション —

transcript_persistence_caught_up() は _last_flushed_db_idx と len(_session_messages) を比べます。これは、FTS の書き込み破損ガードが、遅れているトランスクリプトより 動いている履歴を優先して残すときに反応するのと同じずれです。

memory_high_mb: auto は、ゲートウェイが動いている cgroup の上限から予算を導きます (memory.high、次に memory.max、次に cgroup v1)。上限がなければ搭載 RAM の合計を使います。 数値を指定すれば固定でき、0/off にすればこの処理を完全に無効にできます。ヘルパーは gateway/agent_cache_pressure.py にあります。

キャッシュのライフサイクル

Message arrives
    │
    ▼
get_or_create_session()  →  session_key obtained
    │
    ▼
Lookup _agent_cache[session_key]
    │
    ├── Hit → move_to_end(), reuse AIAgent (preserves prompt cache)
    │
    └── Miss → create new AIAgent, store in cache
                (if at capacity, popitem(last=False) evicts LRU entry)
    │
    ▼
run_conversation()  →  agent processes message
    │
    ▼
Housekeeping soft-releases idle agents without ending transcripts

後片付けの流れ

リソースの退避では、キャッシュ済みのエージェントを取り除き、クライアントを穏やかに解放する前に メモリへ書き込みます。_cleanup_agent_resources(agent) による完全な後片付けは、実際の 会話の区切りとシャットダウンのときだけに使われます。


付録: 主な設定

設定キー 型 既定値 説明
group_sessions_per_user bool true グループ/チャンネルのセッションをユーザーごとに分離する
thread_sessions_per_user bool false スレッドのセッションをユーザーごとに分離する
session_store_max_age_days int 0 N 日より古いセッションを削除する(0=無効)
agent.gateway_auto_continue_freshness int 3600 再開を認める鮮度の窓(秒)
agent.gateway_timeout int 1800 エージェントのターンのタイムアウト(既定30分)
agent.agent_cache.max_size int 128 キャッシュする AIAgent の LRU エントリー数の上限
agent.agent_cache.idle_ttl_secs int 3600 この時間動きのないエージェントを退避する
agent.agent_cache.memory_high_mb int/str auto これを超えると LRU のトランスクリプトを手放す、匿名 RSS の予算
agent.agent_cache.max_evictions_per_pass int 16 1回の逼迫処理で手放すセッション数の上限
agent.agent_cache.protect_recent int 8 逼迫処理が決して触れない、最近使われたセッションの数

状態データベースと FTS の復旧

正本のトランスクリプトは sessions と messages のテーブルにあります。FTS5 の テーブルとその同期トリガーは派生したインデックスで、正本のメッセージを消さずに切り離して 作り直せます。動作中に起こりうる、範囲の限られた障害と、明示的な修復手順については State DB の復旧を参照してください。

会話の寿命

アイドル時や日次でリセットする設定はサポートされていません。明示的な /new と /reset、 圧縮、一時停止、クラッシュからの復旧は、それぞれ別のライフサイクル上の役割を持ち続けます。